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第9回 フーリエ変換の性質 講義ノート

学習目標

  • 畳み込み積分の定義と性質を理解する
  • パーセバルの定理の意味と応用を理解する
  • 畳み込み定理を利用した積分計算の方法を習得する
  • フーリエ変換の性質を応用した実践的な問題解決能力を養う

1. 畳み込み積分

1.1 定義

2つの関数\(f(x)\)\(g(x)\)の畳み込み積分\((f * g)(x)\)は以下のように定義される:

\[ (f * g)(x) = \int_{-\infty}^{\infty} f(y)g(x-y) dy \]

1.2 幾何学的意味

畳み込み積分は、一方の関数を反転・平行移動させながら、もう一方の関数と重ね合わせたときの重なり合いの面積を表す。

1.3 具体例

矩形関数の畳み込み:

\[ f(x) = \begin{cases} 1 & (|x| \leq 1) \\ 0 & (|x| > 1) \end{cases}, \quad g(x) = \begin{cases} 1 & (|x| \leq 2) \\ 0 & (|x| > 2) \end{cases} \]

の畳み込みは、台形型の関数となる。

2. パーセバルの定理

2.1 定理の内容

関数\(f(x)\)とそのフーリエ変換\(\hat{f}(\xi)\)について、以下の関係が成り立つ:

\[ \int_{-\infty}^{\infty} |f(x)|^2 dx = \frac{1}{2\pi} \int_{-\infty}^{\infty} |\hat{f}(\xi)|^2 d\xi \]

2.2 定理の意味

パーセバルの定理は、関数の二乗可積分性とそのフーリエ変換の二乗可積分性が等価であることを示す。これは、フーリエ変換が関数の「大きさ」を保存する変換であることを意味する。

2.3 応用例

  • \(\frac{\sin x}{x}\)の2乗の積分
  • \(\frac{\sin ax}{x}\)の2乗の積分
  • \(\frac{1}{1 + x^2}\)の2乗の積分

3. 畳み込み定理

3.1 定理の内容

2つの関数\(f(x)\)\(g(x)\)の畳み込みのフーリエ変換は、それぞれのフーリエ変換の積に等しい:

\[ \mathcal{F}[f * g](\xi) = \hat{f}(\xi) \cdot \hat{g}(\xi) \]

3.2 応用例

  • 指数関数\(e^{-a|x|}\)の畳み込み
  • ガウス関数\(e^{-x^2}\)の畳み込み
  • 有理関数の積分計算

4. 重要なフーリエ変換対

4.1 基本的な変換対

  1. 指数関数:
\[ e^{-a|x|} \quad \longleftrightarrow \quad \frac{2a}{a^2 + \xi^2} \]
  1. ガウス関数:
\[ e^{-x^2} \quad \longleftrightarrow \quad \sqrt{\pi} e^{-\xi^2/4} \]
  1. 有理関数:
\[ \frac{1}{1 + x^2} \quad \longleftrightarrow \quad \pi e^{-|\xi|} \]

4.2 応用上の注意点

  • 収束性の確認
  • 積分の存在条件
  • 特異点の扱い

5. 重要ポイントのまとめ

  1. 畳み込み積分は、関数の重ね合わせを表す重要な操作である
  2. パーセバルの定理は、関数の二乗可積分性とフーリエ変換の関係を示す
  3. 畳み込み定理は、複雑な積分計算を簡略化する強力な道具である
  4. 基本的なフーリエ変換対を覚えておくと、様々な問題に応用できる

6. 演習のポイント

  1. 畳み込み積分の計算では、積分範囲の分析が重要
  2. パーセバルの定理の適用では、既知のフーリエ変換の結果を活用する
  3. 畳み込み定理の利用では、複雑な積分をフーリエ変換の積に変換する
  4. 各問題で、重要な中間ステップを省略せず、論理の流れを明確にする