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第2回 フーリエ級数展開 問題集【解答】

基本問題

問題1

(1) \(f(x)=\sin 2x\)\(x \in \mathbb{R}\))について: 関数の周期性より、任意の \(x \in \mathbb{R}\) に対して \(f(x+T)=f(x)\) となる最小の正の実数 \(T\) を求める。

\[ \sin 2(x+T) = \sin 2x \]

これが成り立つための最小の正の \(T\)

\[ 2(x+T) = 2x + 2\pi \quad \Rightarrow \quad T=\pi \]

したがって、最小周期は \(\pi\) である。

(2) \(f(x)=\cos 3x\)\(x \in \mathbb{R}\))について: 同様に、任意の \(x \in \mathbb{R}\) に対して

\[ \cos 3(x+T) = \cos 3x \quad \Rightarrow \quad 3(x+T) = 3x + 2\pi \quad \Rightarrow \quad T=\frac{2\pi}{3} \]

したがって、最小周期は \(\frac{2\pi}{3}\) である。

(3) \(f(x)=\sin^2 x\)\(x \in \mathbb{R}\))について: 倍角の公式より

\[ \sin^2 x = \frac{1-\cos 2x}{2} \]

\(\cos 2x\) の周期は \(\pi\) であり、定数項 \(\frac{1}{2}\) は任意の周期を持つため、最小周期は \(\pi\) となる。

(4) \(f(x)=\sin 2x+\cos 3x\)\(x \in \mathbb{R}\))について: \(\sin 2x\) の周期は \(\pi\)\(\cos 3x\) の周期は \(\frac{2\pi}{3}\) である。 周期関数の和の周期は、各周期の最小公倍数となる。 \(\pi\)\(\frac{2\pi}{3}\) の最小公倍数は \(2\pi\) である。


問題2

(1) 関数 \(f(x)\) は区間 \((-\pi, \pi]\)\(f(x)=x\) と定義され、周期 \(2\pi\) で延長される。 したがって、不連続点は各周期の境界点 \(x=\dots,-3\pi,-\pi,\pi,3\pi,\dots\) である。 つまり、\(x=\pi+2\pi n\)\(n \in \mathbb{Z}\))の点で不連続となる。

(2) 各不連続点 \(x=\pi+2\pi n\)\(n \in \mathbb{Z}\))での左右極限は:

\[ f(x-0) = \pi, \quad f(x+0) = -\pi \]

したがって、フーリエ級数の収束値は

\[ \frac{f(x+0)+f(x-0)}{2}=\frac{-\pi+\pi}{2}=0 \]

(3) 特に、\(x=\pi\) での収束値も同様に

\[ \frac{f(\pi+0)+f(\pi-0)}{2}=\frac{-\pi+\pi}{2}=0 \]

となる。これは \(x=\pi\) が不連続点であり、左極限が \(\pi\)、右極限が \(-\pi\) であることから導かれる。


問題3

(1) \(f(4\pi)\) の値を求める: 関数 \(f(x) = x^2\) は連続関数であり、周期 \(2\pi\) の周期関数として延長される。 したがって、\(f(4\pi) = (4\pi)^2 = 16\pi^2\)

(2) \(h(4\pi)\) の値を求める: \(g(x) = x\) を周期 \(2\pi\) の周期関数として延長すると、\(x = \pi + 2\pi n\)\(n \in \mathbb{Z}\))で不連続となる。 \(4\pi\) は不連続点であり、\(g(4\pi)\) は左極限として \(g(4\pi) = g(-\pi) = -\pi\) となる。

したがって、 $$ h(4\pi) = f(4\pi) + g(4\pi) = 16\pi^2 - \pi $$

注意:周期関数の和 \(h(x) = f(x) + g(x)\) は、\(f(x)\) が連続関数であるため、\(g(x)\) の不連続点でも定義される。 ただし、\(g(x)\) の不連続点では左極限の値が用いられる。


発展問題

問題4

(1) フーリエ係数の計算:

まず、\(a_0\) の計算:

\[ a_0=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} x\,dx=\frac{1}{\pi}\left[\frac{x^2}{2}\right]_{-\pi}^{\pi}=0 \]

次に、\(a_n\) の計算: \(x\cos nx\) は奇関数となるため、

\[ a_n=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} x\cos nx\,dx=0 \]

最後に、\(b_n\) の計算: \(x\sin nx\) は偶関数となるため、部分積分を用いて

\[ b_n=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} x\sin nx\,dx=\frac{2(-1)^{n+1}}{n} \]

(2) 収束値の計算:

  • \(x = \pi/2\) の場合: この点は関数の連続点であり、区間 \((-\pi,\pi]\) の内点である。 フーリエ級数の収束定理より、連続点では元の関数値に収束する。 したがって、
\[ f(\pi/2)=\pi/2 \]
  • \(x = \pi\) の場合: この点は不連続点であり、フーリエ級数の収束値は左右極限の平均値となる。 左極限は \(\pi\)、右極限は \(-\pi\) であるから、
\[ \frac{f(\pi+0)+f(\pi-0)}{2}=\frac{-\pi+\pi}{2}=0 \]

収束値が異なる理由: 1. \(x = \pi/2\) は連続点であり、フーリエ級数は元の関数値に収束する 2. \(x = \pi\) は不連続点であり、フーリエ級数は左右極限の平均値に収束する 3. これはディリクレの収束定理によるもので、連続点と不連続点での収束の違いを示している