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フーリエ級数の性質(区間の違いと周期関数への拡張)解答

基本問題の解答

問題1の解答

区間 \([-\pi, \pi)\) で定義された関数 \(f(x) = x\) のフーリエ級数展開を求めます。

まず、関数の偶奇性について確認します。 \(f(-x) = -x = -f(x)\) より、\(f(x)\) は奇関数です。 したがって、余弦項の係数はすべて0になります。

次に、定数項を計算します。

\[ a_0 = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} x \, dx = 0 \]

続いて、正弦項の係数を計算します。 関数 \(f(x)=x\) は奇関数であるため、積分の対称性を利用して次のように変形できます。

\[ \begin{aligned} b_n &= \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} x \sin (nx)\,dx \\ &= \frac{2}{\pi} \int_{0}^{\pi} x \sin (nx)\,dx. \end{aligned} \]

この積分を部分積分法で評価します。 \(u=x\) とおき、\(dv=\sin (nx)\,dx\) とすると、 \(du=dx\) および \(v=-\frac{1}{n}\cos (nx)\) となります。 したがって、

\[ \int x \sin(nx)\,dx = -\frac{x}{n}\cos(nx) + \frac{1}{n}\int \cos(nx)\,dx. \]

さらに、\(\int \cos(nx)\,dx = \frac{1}{n}\sin(nx)\) であるため、

\[ \int x \sin(nx)\,dx = -\frac{x}{n}\cos(nx) + \frac{1}{n^2}\sin(nx). \]

これを区間 \([0, \pi]\) で評価します。

\[ \begin{aligned} \int_{0}^{\pi} x \sin(nx)\,dx &= \left[-\frac{x}{n}\cos(nx) + \frac{1}{n^2}\sin(nx)\right]_{0}^{\pi} \\ &= \left(-\frac{\pi}{n}\cos(n\pi) + \frac{1}{n^2}\sin(n\pi)\right) - \left(0\right) \\ &= -\frac{\pi}{n}\cos(n\pi), \end{aligned} \]

ここで \(\sin(n\pi)=0\) であることを利用しました。

したがって、

\[ b_n = \frac{2}{\pi} \left(-\frac{\pi}{n}\cos(n\pi)\right) = -\frac{2}{n}\cos(n\pi). \]

また、\(\cos(n\pi)=(-1)^n\) であるため、

\[ b_n = -\frac{2(-1)^n}{n} = \frac{2(-1)^{n+1}}{n}. \]

これが求める正弦項の係数となります。

最終的に、フーリエ級数展開は以下のようになります。

\[ f(x) \sim 2 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}}{n} \sin nx \]

問題2の解答

区間 \([0, 2\pi)\) で定義された関数 \(f(x) = x\) のフーリエ級数展開を求めます。

まず、定数項を計算します。

\[ a_0 = \frac{1}{\pi} \int_{0}^{2\pi} x \, dx = 2\pi \]

次に、余弦項の係数を計算します。

\[ a_n = \frac{1}{\pi} \int_{0}^{2\pi} x \cos nx \, dx = 0 \]

続いて、正弦項の係数を計算します。

\[ b_n = \frac{1}{\pi} \int_{0}^{2\pi} x \sin nx \, dx = -\frac{2}{n} \]

最終的に、フーリエ級数展開は以下のようになります。

\[ f(x) \sim \pi - 2 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{\sin nx}{n} \]

問題3の解答

問題1と問題2で得られたフーリエ級数展開を比較して考察します。

まず、定数項の違いについて考えます。 問題1では定数項がなく、問題2では定数項 \(\pi\) があります。 これは区間の中心が原点からずれているためです。

次に、正弦項の係数の違いについて考えます。 問題1では \(\frac{2}{n} (-1)^{n+1}\) となり、問題2では \(-\frac{2}{n}\) となります。 この符号の違いは区間の対称性の違いによるものです。

最後に、余弦項の有無について考えます。 両方の場合とも余弦項は現れません。 これは関数の性質によるものです。

標準問題の解答

問題4の解答

区間 \([0, \pi)\) で定義された関数 \(f(x) = x\) を2つの方法で拡張します。

まず、不連続な拡張の場合について考えます。 拡張された関数は以下のように定義されます。

\[ f_1(x) = x \quad (0 \leq x < \pi) \]
\[ f_1(x) = x - 2\pi \quad (\pi \leq x < 2\pi) \]

このとき、フーリエ級数展開は以下のようになります。

\[ f_1(x) = 2 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}}{n} \sin nx \]

次に、連続な拡張の場合について考えます。 拡張された関数は以下のように定義されます。

\[ f_2(x) = x \quad (0 \leq x < \pi) \]
\[ f_2(x) = 2\pi - x \quad (\pi \leq x < 2\pi) \]

このとき、フーリエ級数展開は以下のようになります。

\[ f_2(x) = \frac{\pi}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2}{n^2\pi} [(-1)^n - 1] \cos nx \]

問題5の解答

問題4で得られた2つのフーリエ級数展開について、その性質を比較します。

まず、係数の減衰速度について考察します。 不連続な拡張の場合は \(1/n\) で減衰します。 一方、連続な拡張の場合は \(1/n^2\) で減衰します。 このことから、連続な拡張の方が収束が速いことがわかります。

次に、収束性について考察します。 不連続な拡張の場合は不連続点でギブス現象が発生します。 一方、連続な拡張の場合は一様収束します。

最後に、項の種類について考察します。 不連続な拡張の場合は正弦項のみが現れます。 一方、連続な拡張の場合は定数項と余弦項が現れます。 この違いは関数の対称性の違いを反映しています。

問題6の解答

\(x = 2\pi\) での収束性について考察します。

まず、不連続な拡張の場合について考えます。 左右の極限値は以下のようになります。

\[ \lim_{x \to 2\pi^-} f_1(x) = -\pi \]
\[ \lim_{x \to 2\pi^+} f_1(x) = \pi \]

収束値は左右極限の平均値である \(0\) となります。 また、ギブス現象により約9%の過剰振動が発生します。

次に、連続な拡張の場合について考えます。 左右の極限値は以下のようになります。

\[ \lim_{x \to 2\pi^-} f_2(x) = 0 \]
\[ \lim_{x \to 2\pi^+} f_2(x) = 0 \]

収束値は \(0\) となり、これは関数値と一致します。 この場合、関数が連続であるためギブス現象は発生しません。

問題7の解答

\(f(x) = x^3\) のフーリエ級数展開について考察します。

まず、不連続点を特定します。 不連続点は \(x = \pi + 2n\pi\)\(n\) は整数)となります。 これらの点での左右の極限値は以下のようになります。

\[ \lim_{x \to \pi^-} f(x) = \pi^3 \]
\[ \lim_{x \to \pi^+} f(x) = -\pi^3 \]

次に、フーリエ級数展開を求めます。 展開式は以下のようになります。

\[ f(x) \sim \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2(-1)^n}{n^3} (6 - n^2\pi^2) \sin nx \]

\(x = \pi\) での収束値について考察します。 収束値は \(0\) となり、これは左右極限の平均値です。 この値は \(\pi^3\) とは一致しません。 これは \(x = \pi\) が不連続点であるためです。

最後に、特別な点での値を考察します。 \(x = \frac{\pi}{2}\) を代入すると、以下の式が得られます。

\[ \left(\frac{\pi}{2}\right)^3 = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2(-1)^n}{n^3} (6 - n^2\pi^2) \sin \frac{n\pi}{2} \]

この計算から、以下の興味深い無限級数の値が導かれます。

\[ \sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^{k+1}}{2k-1} = \frac{\pi}{4} \]

この結果は、フーリエ級数の応用として重要な意味を持ちます。